せっけん

せっけんがなくなった

 私は風呂場で石鹸を使っています。かつてはアレッポという高級石鹸を使っていた時期もありましたが、今は経済的な理由もあり一つ何十円の牛が書いてあるものを使っています。私は少し変わり者ですので、石鹸を意地でも最後まで使います。カミサンもその事はよく知っています。早めに補充すればいいのですが、いつも新しい石鹸を出してきて、無印の石鹸置きに置く「補充」はギリギリです。風呂に入ってから気が付き、濡れた足ですっぽんぽんで石鹸を探しに行くこともよくあります。

 

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 今回は既にせっけんがなくなっていた事を知っていたので、風呂に入る前に洗面台の下にある石鹸置き場をくまなく探しました。しかし、いつもある場所をいくら探しても石鹸はありません。確かもう一つあったはずなのにな、と思いながら五回くらい同じところを探しましたが、どうしても出てきません。仕方がないので今日だけはカミサンのボディソープを使わせてもらい、明日にでもよい石鹸を買いに行こうとすっぽんぽんになって風呂に入りました。カミサンは不審な動きがあるとすぐに何かを察知します。「風呂に入ってきますね」と私が言ってから通常ならすぐに風呂の出入り口がしまる音がして、それからは出入口が開く事はないのに、今回は何だかおかしな雰囲気がしたのでしょう、そしてカミサン自身がいつもとは違うとあることをしたことも手伝って、私が入っている風呂にやってきました。「これ、出しておいてあげたから」カミサンは箱に入った石鹸を私に向かって差し出しました。普通の顔ではありません。少しだけ感情を我慢しているような顔をしています。それは、私がいくら探しても探し出すことができなかった石鹸でした。カミサンはもちろん石鹸が小さくなってきたのを否が応でもわかっていて、そして昨日ついになくなったことを知りました。私が風呂に入る前か入ってから着替えの下着を準備してくれるのですが、その際に下着と一緒に新しい石鹸をかごの中に入れておいてくれたようでした。私はいつも同じところにしか目がいかないので、風呂に入る際はかごの中にある、カミサンがいつもある置き場からかごの中に移動してくれた石鹸に気が付きませんでした。私は一瞬「何で動かしたんだ。かごの中なんていつも見なからわからねえよ」と、カミサンに対するごくごく小さな怒りが芽生えてしまいました。このレベルの感情は、何とか我慢できるものですが、でも、面白くありません。下手な事を言えば喧嘩になってしまうかもしれません。カミサンは私のことを思って石鹸を出しておいてくれたのです。私が見ようが見まいが、それは事実です。まずはその事に感謝しなければと思いなおしました。頭を洗い、身体を洗い、風呂に浸かるころにはだいぶ気持ちも落ち着いていました。夕飯の準備をしているカミサンに「石鹸ありがとね。気付かないでごめん」と言うと、カミサンは夕飯の準備で忙しいにも関わらず、満面の笑顔を返してくれました。
 

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